東京医科歯科大学病院で帝王切開したときの話・中編

前編では入院から手術当日朝までのことを書きましたが、その続です。

第一関門は硬膜外麻酔
手術着に着替えるとストレッチャーに乗せられ、夫とお別れして、エレベーターで別フロアにある手術室に向かいました。手術室に入ったら手術着を脱いで(着圧ソックス以外身に着けない状態で)手術台で横向きに寝るように言われ、前日に説明を受けたように背中を海老のように丸めました。めいっぱい丸めるけれど体が硬いのとお腹がじゃまして前日のイメトレのようにはいかなかった(笑)。麻酔は、脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の2種類を併用する方法でした(どちらも背中に刺す麻酔)。まずは、背中の麻酔を刺す場所に痛み止めの注射をするのですが、まずこれがすごく痛かった!!そのすぐあとに硬膜外麻酔の針を背中に刺されたのですが、「えっさっき痛み止めは?」と思うほどかなり痛かった!!処置してくれている麻酔科医が見るからに新米医師で、なかなか目的の場所に針を刺さすことができず、上司の麻酔科医にきつい口調で指導され、あせりながら試行錯誤しているのが背中越しに伝わってきました。脊椎に針刺されるという事実だけでも恐怖なのに、違うとこに刺さって何かあったらと思うと恐ろしかったです(大学病院だからとはわかっていても、この時ばかりは「上司さん、かわりにやってよ」と心の中でつっこんだ)。試行錯誤のあいだはずっと痛かったのですが、やっとのことで針が硬膜外腔に入り、その後の脊髄くも膜下麻酔はスムーズでした。ちなみに硬膜外麻酔は太い針を刺し、その針の中を通して極細の管を入れて針を抜いてしまうので、背中の中には固定された管だけが残り、手術後も痛み止めのためにしばらく刺したままになります。

いよいよ帝王切開術がはじまる
しばらくして麻酔が効いてくると手足がポカポカ温かくなり、麻酔が確実に効いていることが確認できると、いよいよ手術のはじまりです。大学病院だけあって、手術室には10名近いスタッフがいました。半身麻酔なので自分のお腹を見ながら切られるのかとワクワクしていると、胸の真上の位置にポールが取り付けられ、カーテンが引かれて何も見えなくなってしまいました。その直後、メスでお腹をザックリ横に切られる感触がありました。親知らずを抜くのに口腔外科で手術された方なら覚えのある痛くないのに切られている感です(って例えがマニアックすぎるか)。そして、ひとしきりお腹が切られた感覚がしたあと、切り口を思いっきり手で引っ張られるような感覚がありました。コレ、普通にめっちゃ痛いし!!手術経験がなくて知らなかったのですが、麻酔って切られる痛みには効くけど、この引っ張られる痛さにはほとんど効かないんですよね。レーシックを受けたとき角膜上皮を削るのは痛くないのに、目にリングを入れて目を開けたままにしているのが激痛だったのと似ています(ってわかりづらいですよね)。とにかく、切り口をそれはそれは強い力で引っ張られるもんだから、思わず「イタイイタイイタタタタダッ!!!」と思わず声を上げてしまうと、すかさず麻酔が追加され、当然麻酔は効かずにまた声を上げてしまい、また麻酔を・・・が繰り返され、最後はもうろうとして酸素マスクを装着されました(笑)。感覚では10分くらい引っぱって引っぱって格闘されていたメインの執刀医の先生がついに、「お尻が出ました」と言いました。でもそれからが長くて、さらに感覚では10分ほど息子をお尻からひっぱり出そうと格闘されたあと、「巻いてる巻いてる」と先生が小声でつぶやいたあと、ズリズリ~と盛大にお腹から何かが引きずり出される感覚がありました。直後に「生まれましたよ!!!」と先生に言われましたが、泣き声はまだ聞こえない。一瞬ののちに「泣いてますか?」と私が聞き返したその瞬間に「オンギャァァァァ!!!」とすごいデカい産声が手術室に響き渡りました。その場にいた先生たちが「うわ~おっきいね~、元気だね~」と言ってくれました。産声が聞こえるまで張りつめていた不安や緊張が一気にほぐれ、思わず声も上げずに号泣していると、どなたかが涙をふいてくれてありがたかったです。それと手術中ずっと手をにぎってくれていたスタッフの方がいてとても心強かったです。外科医の友人にこれを話すと、手術の見学中に患者さんを励まそうと手を握ったらすごい勢いで振りほどかれたけどな~と笑っていましたが(笑)。

赤ちゃんとは一瞬の対面後にしばしお別れ
無事にお腹から取り出され、数分ほど保温器で温められてから、やっとタオルにつつまれたわが子の顔を見ることができました。10秒もない対面でしたが、感想は「人形みたいにちいさいな~」でした(笑)。その後、息子はすぐ保育器にいれられ、検査のため一足先に上階のフロアに行き、途中で夫が呼ばれて一瞬だけ対面できたそうです。わたしのほうはお腹の縫合ですが、ゆっくり休みたいなら眠らせる処置をするし、意識のあるままこのまま続行してもいいですよと聞かれました。私はこのまま続行を選びましたが、さきほど追加された麻酔のせいか、酸素マスクのせいか、なんだかランナーズハイのようなとっても気持ちの良い状態になってしまい、縫合の時間はリラックスした至福の時間となりました。

手術台から病室へ
手術台に数人の先生達が取り囲み、「せ~のっ!!」と入院着の敷かれたストレッチャーに移してもらいました。服を着せてもらい、産褥ショーツ&産褥パットを装着され、手術室から出る直前に、すっかりハイになっていたのか、ストレッチャーを囲んでくれていた執刀チームの先生方に、「気が早いですが、第二子の時もお世話になりますのでヨロシクおねがいします」といってしまい、笑いが起こりました。その後はストレッチャーで再び病室へ戻りました。ほっとするのもつかの間で、ここから術後の痛みと母乳トラブルという試練の日々がはじまりました。

長くなったので手術後~退院までは後編で書きます♪


▲想像よりあまりに小さい新生児になれるまで時間がかかりました

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